2023年8月、あの頃に戻っても、たぶん同じことをやる
「じゃあ2023年の創業のところから振り返っていこうか」——そう切り出した小畑。あれから2年半。振り返って2人が口をそろえるのは、「タイムリープしてまた23年8月に戻っても、やり方を変えない」ということだ。
何が良かったか、と聞くと小畑はこう言う。「まず、決断が早かった。2人が早い段階で命題の合意ができたというのは良かったと思っていて。そして、時流がまさに生まれ始めた頃に決断できたというタイミング。このタイミングをつかんで意思決定できたというところが、僕らの原点なんだろうと思う。」
本田が続ける。「必要だからこれはやるのである、というところにちゃんと合意できたのが良かった。冷静に考えたら、A4用紙3枚ぐらいしかない中でいろんなところに行って、『これ絶対いるでしょ』と話して。『技術があるの?』って言われたら、『こうやったらできると思います』と言っていくというのは、普通だったら難しいというか、もうちょっと準備してから行くんだろうな、と思うんですけど。でもそれが自然にできたのは、命題の合意が最初にあったからだと思う。」
「気負わずに、自然体でできた」と小畑は言う。「今必要だということに気づいて、合意して、実行した。それがあまりにも自然にできたというところが、始まりの幸運な一歩だったんだろうな、と思う。振り返ってやり方を変えないというのは、結構、自己肯定感が強いプロセスでここまでこれたねっていう確信でもある。」
もう一度あの8月に戻っても、2人はきっと同じ会話をして、同じ結論を出す。速度の差はあれ、やり方は変えない——それがこの2年半への、2人の偽らざる答えだ。
根っこはぶれない。でも、解像度はどんどん上がる
2年半経って、何がぶれていないかと聞くと、2人は同じことを言う。
「物事の決め方が、ぶれていない」
社会的に必要だという命題を最上位に置いて、そこから考える。その順番だけは、創業当初から一度も変わっていない。本田はこう説明する。「社会課題の解決を最上位の合意に置いていたから、技術のアプローチをガラッと変える瞬間があっても、迷いなく意思決定できた。根本が変わらないから、方法論の変更が怖くなかった。」
海洋業界の中に実際に入っていくと、当初は想定していなかった課題が、色々な産業に見えてきた。「外部のステークホルダーに自分たちの命題意識をぶつけると、相手方がちゃんと共鳴して、我々の解像度を上げてくれる」と小畑は言う。社会との往還運動の中で、漠然としていたビジョンが、少しずつ具体的な事業の形になっていった。政府機関・民間を含む大型契約、100社を超えるサプライヤーとの連携——「命題が、本当に価値を持った事業に転換され始めた」という実感がある。
創業当時には見えていなかった発見もある。「日本のサプライチェーンと連携すると、かなりいい事業ができる」と小畑は言う。造船・舶用品製造をはじめとする日本産業の知見が、そのままOCの事業の礎になっている。本田も続ける。「日本って悲観論もあるじゃないですか。でも今パートナーになってくれている方々と話すと、世界で戦える自負を持った製品がいっぱいある。その力をお借りしながら世界に出ていくというビジョンが描けているのは、すごくいいなと思う。」
旗を立てると、同じ方向を向いた人が集まってきた
今、OCのメンバーは50名規模に近づいている。ロボティクス・宇宙・自動車・ITと、バックグラウンドはばらばらだ。それでも組織のエネルギーが衰えないのはなぜか。
「起点にあるのは、本田さんと僕の爆発力だと思う」と小畑は言う。「スタートアップは無言で実行しても認められない。旗を立てて、実行して、ダメだったらすぐリカバリーを入れてもう一段高いところを目指す。それに対する2人の取り組み方が、雪だるまの芯になっているんだと思う。」
本田はしばらく考えてから、こう言った。「なんでしょうね……嘘をつかない、というのがあるかもしれない。自分で言うのはあれなんですけど、しゃべっている言葉に他意がなく、本当にそう思っていることをそのまま言っている。良くも悪くも、という感じで。」
ただ、2人が大事にしてきたのは、自分たちの命題だけじゃない。「エンジニアにはエンジニアの命題がある」と本田は言う。「会社の命題と個人の命題が、背反することなく融合して高め合っていくサイクルが大事だよね、ということを、全員が本気で思ってくれている。エンジニアのスキルを搾取するんじゃなくて、やりたいことや達成したいことを、会社のあるべき姿に取り込んでいける。それが50人近くになっても続いているのは、すごくいいことだと思う。」
小畑は本田の言葉をこう言い換える。「ちゃんとした動機があって、命題を掲げて、言語化して、共有して、行動する。このサイクルがうまく回っているのが、OCという組織の特徴なんじゃないかな。それが機能している限り、メンバーがいまの倍の規模になっても似たような行動が取れると思っている。」
ジャンプの高さが、どんどん高くなっている
「本当に、この2年半について何か言えることがあるとしたら、『ひたすら加速してきた』という点ですね」と本田は言う。「自分たちの中では毎回同じようにジャンプしている感覚なのに、そのジャンプの高さがどんどん高くなっている。立ち上げの時には、想像していなかった。」
その加速の正体を、小畑はこう言い表した。「社会から大きな持ちかけや要請が来て、それに答えていくことが跳躍の高さを上げる原動力になっている。自分たちのあり姿を自分たちでアップデートしているというよりは、社会の要請に呼応することでより高くジャンプしている感覚がある。」だから加速するほど、社会とのコミュニケーションも深くなっていく。
「1か月後どうなっているかが、いい意味でわからない」と本田は笑う。「それが、面白い。」
「このホームページに書いてあることって、トップページの大上段の命題も、メンバーが語っていることも、我々の偽りない日常そのものだし、そういうものが共存している組織って、なかなかないんじゃないかな」と小畑は言う。「無理がない感じがする。すごい自然体ですね」。本田がうなずく。最後に小畑は、「1年後とかっていう話をすると、この形を維持できていくのが組織の成長としては健全であるというふうに、たぶん僕も本田さんも思っている感じですね。」